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「全部、好き。」 続

前回の短編小説の続編。

リクエストがありましたので更新させていただきます。


設定は前回から変わらず。

前のお話。

まぁ、ヒロインちゃんが多少主人公くんを意識し始めている・・・

って感じです。


うわぁ珍しく甘酸っぱい青春ラブストーリー・・・w
なんか鳥肌たってきた(笑)


続きは追記。













今週末、大会だ。


机の上の卓上カレンダーに、赤いペンの印。
でかでかと元気良く書かれているそれに、書いたのは自分なはずだけど思わず笑った。
制服ではなく、朝練のためジャージで家を出る。学校までの道のりを自転車でかっとばす。ちょっと叫びたくなったりしたけど、朝早いので我慢。緊張してんのかな、自分がわからない。

「・・・緊張・・・あ、してるかも。」


大会ではなく、大会に香里を誘うことに。


見に来て欲しい、その一言がなかなか言い出せない。ていうか、この前からなんかよそよそしい。
この前のあれはなんかやばかったか。
「・・・ま、勢いでなんとかなる、か。」
勝手に自己完結して、嫌なことはさっさと忘れる。今は練習に集中しよう。香里が見ている前で無様な姿は晒したくないしな。


放課後。

部活に行く前、思い出したように香里を振り返った。

「香里」

名前を呼ぶと、あからさまに飛び跳ねた肩。ぎこちなく、「何?」という返答。
「週末、俺、大会あるんだ。」
「・・・そう」
いつもと同じ、そっけないその言葉はいつもより震えているようで。なんかしたかな、俺。


「見に来いよな。」


それだけ言い捨てて部室まで走った。計画では「見に来てくれ」とか「見に来て欲しいんだけど」とか、そういう感じだったはずなんだけど、何故か命令口調になってしまった。
これはまずい。
見に来てくれないかもしれないな。あんな誘い方じゃ。ミス1。




時は進んで、週末。
部員みんなでバスに乗って、会場まで向かう。
ホームラン打てるか、とか、走れるか、とかボール取れるか、とか、色々考えてたはずなんだけど、やっぱり最終的に行き着くのは香里のことで。

「・・・これは・・・重症だな、おい。」

思わず自分で突っ込みを入れたら、隣に座った先輩が慌てて話しかけてきた。
「大丈夫か、杉本!期待の星よ!どこか痛いのか!?」
「いや、全然。大丈夫っす。すみません。」
「大丈夫ならいいんだ・・・」
そして完全に自分の世界に入り込んだ先輩は、どうやら俺以上に緊張している模様。
辿り着いた会場で必死に先輩を励ましているうちに、試合開始の時間になった。



どうしよう。

どうしてもヒットが打てない。

さっきから俺のミスで失点が続いている。ちらりと見回した仲間たちは確かに苛立ちが募っていて、その原因が俺なんだと自覚すると肩になにか重いものが被さってきた。深呼吸しながら観客席を見渡して、探していた姿がないことに落胆。ずしり、と肩に積もった何かは更に重量を増して、バットを握る腕が震える。
こんなんじゃダメだと思うほど、腕から力が抜けて二回目のストライクが決まった。



どうしよう。

どうしても顔を出せない。

雄太はグラウンドからあたしを探してくれているみたいだけど、どうしても外に出れないの。このまえからずっと。雄太の姿がやけに気になって、なんだか恥しくて。
ミスが続く雄太を本当は思いっきり応援したいんだけど、羞恥心が邪魔して前に出れないで居る。そんなあたしがあまりにも変だったのか、小学生くらいの男の子が、

「ママー、なんかあのお姉ちゃん変だよー」

なんて、完全にあたしを指差して叫ぶ。たぶんその男の子のお母さんは、

「見ちゃいけません!!」

さっと男の子の顔を試合のほうに向けて、その腕に抱いた。そんなにあたしって変ですか。
ため息を吐きながら、試合の行方に目線を戻すと、雄太がたったいま2回目の空振り。

2アウト。待ってよ、だってこれ、最後でしょ。最終回でしょ。あと一回で終わりだよ?

「何やってんの・・・お馬鹿雄太・・・!」

いっつも最後は決めてたじゃん。どんなことでも、どんだけバカでアホでも最後だけはカッコよく終ってたじゃん!
気が付いたら、客席の陰から飛び出して一番前まで走っていた。大きな音を立てて柵にしがみついて、思いっきり叫んだ。


「お馬鹿雄太!!ちゃんと打ちなさいっ!!!!」


バッドを構えなおしていた雄太が驚いた顔で振り返って、あたしの姿を見つける。あげたバッドが地面につくほど降りていって、それから雄太はにっこりと笑った。

あたしの大好きな、あの笑顔で。

大きく頷いて、声は聞こえないけどきっと「おうっ!」って返事したんだと思う。
もう一度力強くバッドを構えて、ピッチャーがボールを投げた。
「・・・打って、雄太。」
甲高い音がして、白い球が柵を飛び越え、どこかに飛んでいった。


ホームランだ。


呟いた声は、背後の歓声にかき消されてあたし自身聞こえなかった。
ホームに走って辿り着いた仲間たちや監督に抱きつかれたり、どつかれたり、そんな大騒ぎの雄太のチーム。雄太は、そんな中でも顔を上げてあたしをしっかりと見て、思いっきり空に手を突き上げた。つられてあたしも思いっきり拳を突き上げて、他の観客と同じように叫んだ。





選手が出てくるであろう出入口の近くで雄太を待つ。

別に待っててとか言われたわけじゃないけど、なんとなく。せめて「おめでとう」の一言だけでも言いたくて。
思い出すのは、あの時、図書室前で言われた言葉。
あれがどういう意味だったのかは、混乱した頭では判断できなかった。きっと友情って意味なんだろうって片付けようとするたびに、雄太はそれを邪魔するように、許さないように、切なげにこちらを見つめたりするから。どうしても忘れられなくて、あの時髪に触れた無骨な手のひらの温もりが消えてくれなくて。

まあ、なんであろうと、一発ぐらい殴ったって別にいいかな。

永遠にループしそうな思考を断ち切るために、勝手にそう自己完結して顔を上げるとにこにこと笑う雄太がいた。

「やっと気づいた。」
「え、あっ、ご、ごめん、気づかなくて・・・っ」
手をうようよと動かしてごまかそうとすると、雄太はまたあたしの頭を撫でた。

「可愛いなぁ、お前。で、どうした?こんなところで」

余計な言葉がくっついてきて、思わずショートしそうになる頭の回線。
なんとか繋ぎとめて、軽く深呼吸して用意していた言葉を言う。
「おめでとう。よかったね、一勝できて。」
離れていった手になんとなく寂しさを感じながら、雄太を見上げると大きく笑って頷いた。
「おうっ!今回のは香里のおかげだ!さんきゅ」
あの時、声をかけてくれなかったら、多分あのまま三振してたと思う、雄太はそう言って少し苦しげに笑った。その苦しそうな表情の意味がつかめなくて、困惑。尋ねようにもどうしたらいいのかわからないから、そのまま沈黙するしかなかった。


「・・・この前、」


たっぷりと間を置いて、雄太がそっと話し始める。いつもの笑顔はそこにない。
「この前、お前のこと好きだって言ったじゃん。」
「・・・う、ん」
ぎこちなくなってしまう自分が恨めしい。普通にしてられないの。

「あれ、本気。友情通り越して、愛情。恋慕。恋。」

雄太にしては珍しく難しい言葉を使うな、なんて頭では考えていたはずなのに顔は熱くなっていくばかりで。対処の仕方がわからなくなってあたふた。


「俺に、しとけよ。先輩じゃなく。」


先輩。きっと多分、転校当初にどぎまぎしてたあたしを気遣ってくれたあの人のこと。訳がわからない場所で、心細くて、そんなときに声をかけてくれたあの人は憧れの人だった。でも。

でもね、違うんだよ、雄太。

やっぱり、あたしは。
「・・・あたしは、」
掠れた声が出た。身体を強張らせた雄太をちょっとだけ見上げて、それから思いっきり叫んだ。



「あたしは!いつもアホでバカで、でも誰よりカッコイイお馬鹿雄太が!大好きです!!」



雄太のチームの選手、監督、対戦相手だった人たち、帰り際の観客たち。驚いたようにこちらを見る人たち。彼らと同じ顔をした雄太が、照れたように笑って地面に鞄を放り投げた。
これでもか、ってくらいに抱きしめられて、正直昼ごはんを吐きそうになった。
「ちょ、お馬鹿!人が見てるよ、放しなさい!」
「あんなにでっかい声で告白しといて、今更人目を気にしますか、お前は。」
耳元で身体の芯まで響くような低い声に鳥肌が立つ。
計画では、あまりの恥しさのためいい逃げして走って逃げるつもりだったのに。

「走って逃げようとか、無理だよ。すぐに追いつく。」

ちくしょうお馬鹿のくせに。

「こういう時だけなんで判るの・・・お馬鹿ぁ・・・」

周りの生暖かい視線を全身で受け止めながら、雄太の広い背中に腕を回して力の限り抱きしめた。








そういえば、一発殴るって決めてたんだ。まあ、後でいっかかっこわらい。
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非公開コメント

No title

スゲー!!
すごい文章力ですね・・・・正直感動しましたっ!!

応援してますww
プロフィール

厘猫

Author:厘猫
厘猫っていいます。

生物学上は女。多分。確かそう書いてあった気がする戸籍とか。
年中頭の中は中2の夏のある日。
心理テストでもそう出た。
でも冷たい人間だって称される。
何言ってんだ、だれより熱いハートを持ってんだぜ、俺は!!!

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